Intel NUCを選ぶメリット・デメリット
自作PC初心者でも簡単に自作PCが作れるIntel製のベアボーンNUC(Next Unit of Computing)。Intel NUCはどこが優れていて、どこが弱点なのかを実際にIntel NUCを5年以上愛用している筆者が解説します。
公開日: 2020.8.16
Intel NUCを選ぶメリット
自作PCの知識がほぼなくてもプラモデル感覚でPCが組み上がる
Intel NUCは、「メモリとストレージとOSがあれば動く」というコンセプトのベアボーンPCなので、とにかく組み立てが簡単です。
購入するショップでIntel NUCに対応するメモリとストレージを店員さんのオススメ通り買って、家に帰ってきたら説明書の通りにパーツをつけれてOSをインストールすればすぐに使えます。下手したら作業開始から30分後には普通にパソコンになっています。これは自宅PCとしてもベアボーンPCとしても革新的です。
それでいて、見た目は超小型でデザインも悪くない自作PCが組めるのですから、自作PC初心者にもちょっとしたPCが欲しい自作玄人にも最適なPCになっていると言えるでしょう。
BIOS・ドライバが長くサポート
自作PCを使っているとパーツのドライバやマザーボードのBIOSの更新は悩みどころです。ところが、Intel NUCならそうした心配はありません。既存のIntel NUCで、長いものでは6年以上もアップデートがサポートされています。
とにかく省電力
自作PCの悩みどころは、地味に消費電力が大きいところです。毎日1時間程度の使用であれば気にすることもありませんが、毎日数時間使う常用PCとして考えると電気代はバカになりません。
Intel NUCはTDPが15Wものがベースで、中身はTDPが6Wというモデルまであるほど省電力性が高いPCです。そのため、常時オンになっているメディアプレーヤーやテレビPCなどに最適なのです。
コスパは悪くない
Intel NUCはメインラインであるCore i5モデルでおおよそ4万円前後と、ベアボーンPCとしてはかなり高い部類に入ります。
しかし、
- CPU
- マザーボード
- Wifi / Bluetoothユニット
- 電源
- ケース
これらのパーツが入っていると考えたら、必ずしもコスパが悪いとは言えません。試しにこれらのパーツを「普通の自作PC用のパーツ」で集めてみると、意外と近い値段になるはずです。
それでも性能比で考えたらIntel NUCが高いということには変わりませんが、ドライバなどのメンテナンス性なども含めて考えれば「コスパは悪くない」と言えるのではないでしょうか。
Intel NUCを選ぶデメリット
CPUが選べない・CPUが基本ノートPC向け
Intel NUCは、全てのモデルでCPUがマザーボードに直付けされています。つまり、ユーザーがCPUを交換することができません。
そのため、Intel NUCでは同世代の種類の異なるCPUが搭載されたモデルが複数リリースされるようになっていますが、超小型サイズゆえに、基本的には低TDPなノートPC向けのCPUを搭載するのが基本です。
最近はノートPC向けのCPUも数世代前のデスクトップ向けCPUを超えるような性能が出るものがありますが、それでも、自作PCが8コア16コアが当たり前の「多コア時代」に突入しているのに、CPUコアが基本4コア程度のものというのは少しさみしいところ。
そうした声に応えて、最近では8コア・16スレッドのIntel Core i9-9980HKを搭載したNUC9i9QNXが発売されましたが、なんと実売は17万ほど。Mini ITXなRyzenなら、dGPU付きで10万くらいで組めるのでコスパは高くありません。
CPUファンが選べない
Intel NUCのレビューで意外と多いのが「ファンノイズ」です。
見た目は超小型デスクトップなIntel NUCですが、中身はノートPC。CPUもノートPC用ならばCPUファンまでノートPCクラスのものが搭載されているのです。
そのため、高負荷を一定時間かけると、CPUファンがフル回転して轟音&高周波帯のファンノイズを常時発します。これは、「デスクに溶け込むくらい小型の常用PC」として組むとかなり不快にです。図体が小さいのに、音的にものすごい存在感を主張します。
同じ小型PCでもMini ITXフォームセクタのPCであれば、デスクトップ向けの高性能・静音CPUファンを搭載したり、ケース内ファンを取り付けて放熱を工夫したり、小型水冷ユニットを組み込んだりとカスタマイズのしようがありますが、そうしたカスタマイズができないのでIntel NUCの痛いところです。
拡張性が低い
CPUやファンが選べないこともそうですが、Intel NUCはそれ以外の拡張性も低いのがデメリットです。
ユーザーが選べるのは、メモリ、ストレージくらいなので、dGPUを足したり、SSDを複数台追加したりと、自作PCのストロングポイントである「拡張性」が極端に低くなっています。
最新のIntel NUCにはUSB type-CポートがThunderbolt3に対応したモデルがあるので、eGPU(外付けGPU)という選択肢も出てきたので、そうしたユニットと組むことで高性能な拡張も可能になりました。しかし、ビデオカード + eGPUユニットでIntel NUCがもう2台ほど購入できる価格(10万円弱)になってしまいます。ここまでしかIntel NUCを使うメリットがあるとは思えません。
Intel NUCほどの小型化が必要ないのであれば、素直にMini ITXケースを選んだ方が長く使えるでしょう。
Intel NUCを選ぶメリット・デメリットを見てきました。
製品として非常に魅力的に仕上がっているIntel NUC。筆者もIntel NUCの魅力に取り憑かれたユーザーの一人で、かれこれ10年以上自作PCを作ってきて、唯一5年以上も使っている自作PCがIntel NUCです。
ただし、小型PCとしては万人ウケするモデルですが、自作PCのベアボーンとして考えた時には「万人ウケしない」モデルとも言えるので、購入前に用途に合っているかをしっかりと確認してから購入するようにしましょう。